2014年1月7日火曜日

旧勢力の退潮ーマイクロソフトの落日

昨日の日経電子版の記事でマイクロソフトの記事が掲載されていました。要は、WindowsパソコンがOSが8になっても、それが全く起爆剤にならずに、全く売れずにソニーのVAIOの工場に勤務している人たちのリストラが始まったという内容でした。



その記事はこちらから。
決壊するウィンドウズ帝国 マイクロソフト、迷宮に
http://www.nikkei.com/article/DGXNASFK2705C_X21C13A2000000/

マイクロソフトがダメになった理由を考えてみた


反面アメリカのAmazonではGoogleのChromeノートの2機種がクリスマス商戦のベスト3に入るという状況で、マイクロソフトに至ってはスティーブ・バルマーの後任CEOが未だに決まらず、会社分割の話まで出てきてる始末。常に勝ち続けてきたマイクロソフトがいかにダメになってしまったかということが象徴される記事でした。このあたり、マーケティング的な立場でどうしてマイクロソフトがダメになったのか考えていきたいと思います。

僕から見たマイクロソフトの企業文化は2つあります。
  1. ユーザーに手間をかけさせる製品とサービス
  2. 他のサービスのいいとこ取りの製品とサービス
この二つによってマイクロソフトのブランドが大きく低下して、かつ、このマイクロソフトのダメなところをAppleやGoogleがしっかりカバーしたことで、この2社のブランドがマイクロソフトのブランド低下と相対化して、上昇したというところがあります。

この辺りを詳しく説明すると、1番目の手間をかけさせることを良しとするサービスというのは、例えばマイクロソフトオフィスを例に挙げれば、このソフトを一般的に使っていて機能の10%使っている人はまずいないと思います。つまり、残りの90%はあまり使われていないものです。

OSについても、Windows8を使ったことがないのでわかりませんが、以前のOSに関して言えば書店に行くと「Windowsを早くする方法」というようなムック本がいくらでも売ってます。これは、Windowsを快適に使うためにはユーザーごとにカスタマイズしないと使いにくいということの裏返しであり、それは明らかにユーザーに負担をかける仕組みと言わざるを得ず、それが今日いかに「悪」であるかということを恐らくマイクロソフトは理解してないと思うのです。

成功している会社はシンプルを目指す


それはGoogleにしても、Appleにしても、Amazonにしても、Facebookにしてもネット時代の勝者と言われる共通の要件というのは、いかにシンプルにするかということを追求しているかということなのです。

Googleにしても検索の精度を高めて、かつ、それが早く表示させるということに大変な開発をしている。逆に言うと、そういうサービスを提供することでGoogleのブランドが非常に高くなりました。

またAppleにしてもiPhoneではスティーブ・ジョブズが病的なまでにこだわったのは、使い勝手でした。それは彼の自伝に詳しく書かれていますが、アイコンの大きさや画面の大きさなど、いかに使いやすくするかということへのこだわりは、鬼気迫る感じです。

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Amazonについても、サイトの使いやすさというものに凄くこだわっていて、ジェフ・ベゾスのインタビューを読むと
http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20120427/231454/?rt=nocnt
彼は
  • 品ぞろえ
  • 利便性
  • 低価格
にこだわると言ってます。ECサイトでのこの要件はとても大事で、いかにユーザーの負担をかけないようにする配慮がよく分かるのです。ここ、すごく大事なポイントです。

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使い勝手への配慮がかけるMS


ところが残念ながらマイクロソフトには、そういう配慮が全くないのです。マイクロソフトはYahooやノキア、Facebookと有効な関係を築いているのに、わかってない。だから、どんどんブランドが下がるし、そういう状況はネット時代においては伝達手段がいくらでもありますから、ますます多くの人に伝わってしまう。そういう影響力にし対する配慮も全くない。結果としてブランドが低下するということになってしまったんだと思います。

次にいいとこ取りの件ですが、以前のマイクロソフトというのは恐ろしく喧嘩の強い会社というところがありました。マイクロソフトがどんどん大きくなっていく過程には、次々ライバルを圧倒していきました。僕の知っている限りでは、
  • AppleとのOS戦争での圧勝
  • Netscapeとのブラウザ戦争での圧勝
  • ジャストシステムやロータスとのオフィス戦争で圧勝
と、本当に負け知らずでした。未だに勝敗は決していませんがXBOXにしても、競争相手はソニーのプレステでした。
とにかくマイクロソフトという会社は、儲かっている事業に参入して、まずは買収を持ちだして、それがダメであれば、対抗製品を立ち上げて、その豊富な資金力とマーケティング力で相手を圧倒するというやり方でした。今のAppleはずいぶん良くなりましたが、OSで負けてしまった時は、ボロボロになりました。

普通欧米ではオリジナリティのなさというもの対して、徹底的に批判的で、恐らくマイクロソフトにもそういう批判はあったんだと思いますけれども、それをも圧倒する業績が以前のマイクロソフトにはありました。

ところが今は冒頭の日経の記事にもあるように、企業分割の話まで出てきている。特にOSの点でGoogleのChromeノートが伸びてきてたら、そういう状況も現実的になるだろうと思うのです。
グーグルパソコン 台頭
http://www.nikkei.com/article/DGXNASDD060UH_W4A100C1TJ0000/

この記事によるとグーグルパソコンは
  • 価格:Windowsパソコンの20〜30%
  • 起動時間:Windowsパソコンの1/3
  • 重量:1.5キロ
  • オフィス等:ネットで対応
という感じで、「負担」という観点から見ると、グーグルパソコンに軍配を上げざるをえないのです。グーグルにしてみればとにかくAdWordsさえユーザーが利用してくれればいいので、コストはどんどん下げてくる。ちなみに価格という点で言うと、グーグルパソコンは200ドルほどで、この価格でVAIOやdynabookは無理。そうすると、コストの点でユーザーがグーグルパソコンに流れる可能性は実に高いのです。セキュリティ上大きな問題が残りますが。

世の中の潮流が「シンプル」に向かっている今、単体で多機能は不要になっているので、企業分割は時代の趨勢にマッチしていると思うのです。