2014年6月2日月曜日

昨日の軍師官兵衛ー荒木村重とは何者なのか?

引用:軍師官兵衛公式サイト

昨日の軍師官兵衛は、久しぶりにまともな状況というか、田中哲司がさすがに当時の荒木村重が追い込まれるところを、迫真の演技でなかなか迫力がありました。今日はこの村重について色々と考えてみようと思います。


荒木村重とは何者か


荒木村重という人物は、かなり理解し難いところのある人であるものの、人を機能として見る織田信長に見込まれて、村重が信長に出仕してから6年で織田軍の司令官になり得たということから、生半可な実力ではそこまで上がることはできなかったであろうという事はあったと思います。今の社会で言えば、社長が織田信長とすると、荒木村重は柴田勝家、羽柴秀吉、明智光秀と同格の副社長クラスだったということです。

ところが、村重は反逆をする。これは織田信長になんか仕えてられるかという村重の個人的な感情と、あとは毛利が支えるという一言があったわけで、それに基づいて反逆に立ち上がったわけです。

荒木村重の生涯は実に複雑でして、時系列的に言うと
  1. 織田への反乱
  2. 有岡城から尼崎城への逃亡
  3. 毛利へ亡命
  4. 伊丹城にいた女子供約500人は処刑
  5. 信長の死後秀吉に拾われ、御伽衆となる
  6. 茶人として筆庵道薫と号して千利休の高足7人のひとりとしての生涯を送る
というものです。

司馬遼太郎さんは村重をどう見ていたか


いわゆる戦国武将が、身一つで華族や家臣を捨てて逃げて生きながらえ、しかも秀吉の御伽衆及び利休の高弟として生涯を送るというのはどういうことなのかということを、司馬遼太郎さんが「『歴史の中の邂逅2』の鬼灯(ほおずき)創作ノートー荒木村重のことども」で書かれています。


身一つで逃げた村重


尼崎城を身一つで落去してからの村重は、通常の感覚から言えば倫理的な極限状態にあったと言っていい。ふつうなら狂うか、自殺するか、どちらかに追い込まれるはずだが、村重は茶事に身をゆだねて歳月を送ったかの観がある。
また、村重が身一つで逃げてしまったことで、当初、尼崎城を開城すれば、伊丹城に籠っている者達は助けるという条件出会ったにもかかかわらず、村重がそれに従わなかったということについても、
伊丹城の数百の女子供は村重の妻女や、村重が愛した側室たしをふくめて、ことごとく磔殺(たくさつ)、焚殺(ふんさつ)された。われわれが持った過去の事件で、村重に即してみても、虐殺された女子供たちに即してみても、これほど救いがたい事件はないのではないか。
と、司馬さんがものすごく怒っているのがよくわかります。磔殺というのははりつけられて、殺されることであり、焚殺というのは、焼き殺すということで、それを指示した信長にも人格的に大きな問題があるにしても、やはり逃げてしまった村重にも普通の人ではないということがわかります。それは、今後軍師官兵衛では三木城攻めをしますが、この際でも城主の別所長治が家臣を救うために、切腹をしていますし、高松城攻めにおいても毛利方の清水宗治が、切腹をすることで、家臣及び結果的には毛利家全体を救うという、言わば美しい人間像も見られる一方で、村重は…ということになるのです。

村重はその後秀吉の御伽衆として生涯を送る


しかも、秀吉の御伽衆になるということは、いわゆる秀吉の話し相手になるということであり、これについても次のように書いています。
御伽衆だけは(略)、いつでも本丸にのぼって秀吉の日常生活の中に入り込むことができたから、性格的に危険な要素をもった人間は御伽衆に選ばれなかったろうし、逆にいえば平常心があても平衡感覚に富んだような、ごく安定した性格や精神のもちぬしが選ばれたかと思えるし、荒木村重の性格も、こういうことから逆算することもできる。
というもので、非常に読みにくい人ではあるということは確かですね。ただ、村重自体も新参者ということもあって、織田家の中で気を使う事が多い中で、明智光秀と気さくな秀吉に対しては心を許しているということはあったというのは何かの本で読んだことがありますし、秀吉もその事はわかっていたのかもしれないですね。実際に、織田家の戦いの場合は、信長はひたすら殺し尽くすやり方をする場合に、とにかく火を使って敵を焼き殺そうとしましたが、秀吉の場合は基本的に敵味方ともあまり犠牲の少ない水攻めをしたというのは、秀吉の信長への批判であったということも何かの本で読んだ記憶があります。

村重が茶器を愛でるシーンは将来の村重を暗示したNHKのメッセージだ


引用:軍師官兵衛公式サイト

話は軍師官兵衛にもどすと、昨日の最後のほうで村重が茶器を狂気じみた感じで愛でるシーンが何度もありましたが、これは今後のドラマの展開の始まりというか、村重の将来を視聴者に暗に伝えていると言うことが、なんとなくわかりました。

なお、この村重のシーン及び黒田官兵衛の幽閉〜救出にかけては、播磨灘物語の3巻が実に読み応えがあります。